時刻は夜の二時を過ぎて、薄くなった布団に潜り込む。それでも窓や屋根を激しく打ちつける雨音から逃げたくて、買ったばかりのCDをずっとリピートし続けている。
望まない超能力で日常を奪われた少年少女達の映画の主題歌。映画館で見た予告が、頭から離れなかったから。
私とは正反対のキャラクター達なのに妙に惹かれたのは、元々の趣味がそうだっただけ。
梅雨は苦手。癖っ毛はいつもよりうねってしまうし、気分の良い日なんて数える位しかなくて。学園の忙しない喧騒に紛れるのが更に難しくて息苦しくなるし、今だって土砂降りの音に怯える。
かといって、晴れ晴れとしたお天気にもびくびくしてしまうけど。
「…よりにもよって」
その言葉を呟いた瞬間、改めて自分が嫌な人間であることを思い知らされて、布団の中で膝を抱える。
だいすきな人の幸せを願っているのは本心なのに、せめて相手が彼じゃなければ、なんて思っている。何処で知り合ったんだろう、いつから仲良くなったんだろう、良い所があるのもわかってる、でもどうして、私じゃ。
「…気持ち悪い」
いつだってそう、自分の事は棚に上げて、優しく手を取ってくれる誰かの一番になりたいなんて馬鹿な気持ちを勝手に抱いて、でも嫌われたくないから黙り込んで、一人で勝手に置いてかれたような気になって。
汚い感情を上手く整理できない。こんな気持ち悪い私を、誰にも見られたくない。
昨日も代わり映えのしないコンビニのおにぎりは味気なく、合宿で食べた手作りのおにぎりと温かいお味噌汁が、ふいに懐かしくなる。また食べられるかな、お願いしてもいいのかな。嫌がられないかな。
そんな夕飯のお供に、なんとなく流しているだけの音楽番組で、例の主題歌を担当したバンドがその曲を披露していた。ひどく切ない旋律のピアノと、男性にしては高いボーカルの歌声がまだ反響して、歌詞が文字のまま頭から消えなくて、だからついCDを買った。
『心から、君の幸せを願う』
ああそうだ私は走りつづけないと、私は誰でもない『あの人』を追いかけないと。『彼』と約束したから、がんばらないと。
思い出してしまった柔らかな言葉に視界がじわりと歪み、枕に染みが広がる一方、浅くなっていた呼吸は少しずつ落ち着いていく。
『死に物狂いで行き急いでんだ』
プレーヤーは相変わらず同じ曲だけを流し続ける。
私は、贅沢をし過ぎてるんだ。
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