♪　君という花　ASIAN KUNG-FU GENERATION

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『お誕生日、おめでとう！』

　ログインするとゲームキャラが一番早いお祝いの言葉をくれた。
お祝いとしてレアキャラが引けるチケットがメールボックスに送られた事を知る。
とは言っても、オレ自身の運は大して良くもないから、微妙なキャラが出るだろうけど。

　いや、運は良いのか。実際こうやってまだ生きて誕生日を迎えている。
焼け死んだつもりが、こうして何不自由なくネトゲで遊んでいる。

　誕生日が嬉しくない訳じゃない。父さんが１日じゃ食べきれないサイズのケーキを買ってきて、母さんがご馳走を作って、転校前の友達からもメールやチャットで連絡がきて。勿論、学園の今の友達からも有り難いことに祝福を受ける。

　ただ姉の死んだ年齢に近付くのがそんなに恐ろしいのかと自分自身に問いかければ、恐ろしいと、素直に答えが返ってくる。素直なことは良いことだ、こんなもん見栄を張ったって、自分が疲れるだけなんだから。

　あと一年で、いよいよ同じ歳になる。

　まるでおとぎ話のお姫様みたいだ、その時オレはどうなってる。
１８になったら糸車の針にでも刺されて永遠の眠りにつくのかもしれない。

　軽いため息をかき消すような、カチカチとリズミカルなマウスのクリック音が心地良い。レベルアップを知らせるサウンドを聴きながら、そのキャラクターの装備をととのえる。

　このキャラクター達と同じ様に、オレ自身もどっかの神様のゲームに付き合わされてるんじゃないかと、よく考える。神様的には、ろくに敵も倒さずに勉強もそこそこな雑魚キャラにうんざりしているのかもしれない。ざまあみやがれ。

　とはいえ、結局のところオレは自分の身が可愛いし、同時に何も犠牲に出来やしない。あの頃と少しは何か変わったんだろーか。

　何度目かのため息をついた頃、ケータイのバイブに気付く。いい加減スマホに変えればいいと思いながら、我ながら大事に使っているせいか未だに壊れる兆候はない。

「おたおめ」

　無題のタイトルに笑ってしまうほど短い文章。旧友に返す内容は同じ四文字。

「イエーイ」

　今年もこの日はやってきたのだから、来年もやってくる様に願っておくべきか。それとも呪いを受けない様に祈ってみようか。

『レベルアップしました』

　また別のキャラが嬉しそうに報告してくるのを、ほんの少しだけ、自分に重ねた。