4月になって季節は春になったのに、今日は妙に寒くて、雪も降っていた。昼間でそれ位だから、今晩は特に冷え込んでいて、寒さに強いつもりでいても、流石に部屋着の上から半纏を着込んで、毛布を抱き込む。
夜中の好きなドラマも、なんとなく流しているバラエティーも殆ど終わり、ニュースや通販番組ばかりになったテレビのチャンネルを切り替え続ける。
眠れないのは寒さのせいじゃなくて、3月の終わりに出会ったダークネスの言葉と、私自身の言葉のせい。
「…なんで私、あんな事言ってんろ」
何処にでも居そうな風貌の、灰色のスーツを着た六六六人衆の残像をぼんやりと思い出す。誰一人堕ちることなく、死ななかった。灼滅対象の、彼以外。
『死よ、生に感謝します』
幾度と教室に通って、最低でも月に一度はエクスブレインの依頼をこなそうとして。毎日毎日、ブレイズゲートにも通って。
だけど全然、近づく事が出来てない。
ダークネスどころか、出来損ない、成り損ないと呼ばれる皆にすら。
純粋灼滅者と人造灼滅者は、大きく違う。勿論、私と「同じ」皆の中にも、望まずそうなった人は居ると思う。
けれど、出来損ない以下の模造品が、完成品達を羨んでも、良いじゃない。
灰色の死体を瞼の裏に留めて、紛れもなく自分が放った言葉を思い出す。
『もっと、もっと、もっと殺して』
どうしてあんな事を言ったかは、覚えてる。理解してしまった。本当は、わかりたくなかったのに。
嗚呼、違うのかも。本当の本当は、わかりたかったのかな、だからこの、羨望や妬みを言えないもやもやが、汚い感情が噴き出してしまったのかも。あれ、どっちなのかな、ねぇ、もう私は
「……やめよう」
返ってくるはずのない問いで頭がぐちゃぐちゃになる前に、自分の言葉でトドメを刺す。だって意味が無い。この問いにはなんの意味も無いから。
「次は、殺せるかな」
そう、これでいい。今はきっとこれだけでいい。そうして次も、次も、そうやって続けていけば、近づける。きっと、あの人に。
そんな小さな願いを胸にしまい込んで、全てのチャンネルでテレビが放送終了の静止画像を流すまで、私は真っ暗な部屋でチャンネルを切り替え続けた。
窓から夜景なんてものは見えなくて、雪が降っているかどうかも、分かる訳がない。
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