包みを開けて箱から出して、新しく手に入れた、小さなオルゴールのネジを巻く。
よく行く雑貨屋で、売れ残りとして安く売っていた。…そういえば、よく行く店というのは、「お気に入りの店」と呼んでいいらしい。
物が増えていく度、食べ物の味の「すき」と「きらい」が分かるようになる度、勉強をして学ぶ度、思う。
学園に入る前に、「体の年齢に、心と頭の年齢が追いついていない」と言われ、「心と頭の年齢を、体の年齢に近づけていこう」と言われた。
それ以来、初めてやること、初めて見る物、初めて聴く物が増えた。
知らないことを沢山教わり、沢山覚えるようになった。嬉しいことや、楽しいという感情も、なんとなく分かるようになった。
保護者や武蔵坂の教師が教えてくれたのは、
「君が居た場所は異常で、人としてやってはいけない事をさせられていた」
「君は、人にならなくてはいけない」
あの場所に居て、悲しいと思うことはあった。俺がそう思っている以上に、他人から見れば悲しいと感じることがあったのかもしれない。
…けれど、悪人を殺すことと、ダークネスを殺すことの違いが、まだ、分からない。
あの場所に居た頃教わったのは、「悪を許してはいけない」
武蔵坂も、「悪を許してはいけない」。
その一点は変わらないように思えるのに、どうして違うのだろう。
寮生に聞いてみると、答えは色々だった。
「馬鹿ね、どっちも同じよ。違いなんて無いわ」
「人は法で裁けるけど、ダークネスは裁けないだろ。なら人は、僕達ではなく法が裁くべきだ。ダークネスは法では裁けないから、僕達が代わりに灼滅するんだよ」
「はあ?なに、お前そんなこと考えてんの?とりまダークネス倒せばいいって言われてんだから、それで良くね?暴れられるし一石二鳥」
「私は、罪を償うために此処に居るよ。それだけ」
通っているクラブの部員や、よくブレイズゲートに連れて行ってくれる皆に、
訊いてみようとも考えた。きっと彼らは、俺の質問にきちんと答えてくれる。
けれど皆やさしいから、心配を掛けてしまう。だから、訊いてみたことはない。
「正しいかどうかは自分で決めろ」
保護者の言うことは、分かりやすいようで、よく分からない。
ネジを巻き終えて手を離すと、オルゴールが鳴り始めた。
店先で聴いた時も思ったが、やはり知らない曲だ。
今度寮母に訊いてみよう。笛で吹ける曲なら、練習して吹いてみよう。
吹ける曲が増えると、寮夫婦はとても喜んでくれる。
保護者も、様子を見に来た時に「聴かせろ」と言う。
「自分の意志で物事を決めて、生きていくのが今のお前の任務だ」
…あの日、保護者が笑って言った命令を、俺はまだちゃんと理解していない。
いつか、彼の言うことの意味が、正しく分かる日が来るのだろうか。
よく行く雑貨屋で、売れ残りとして安く売っていた。…そういえば、よく行く店というのは、「お気に入りの店」と呼んでいいらしい。
物が増えていく度、食べ物の味の「すき」と「きらい」が分かるようになる度、勉強をして学ぶ度、思う。
学園に入る前に、「体の年齢に、心と頭の年齢が追いついていない」と言われ、「心と頭の年齢を、体の年齢に近づけていこう」と言われた。
それ以来、初めてやること、初めて見る物、初めて聴く物が増えた。
知らないことを沢山教わり、沢山覚えるようになった。嬉しいことや、楽しいという感情も、なんとなく分かるようになった。
保護者や武蔵坂の教師が教えてくれたのは、
「君が居た場所は異常で、人としてやってはいけない事をさせられていた」
「君は、人にならなくてはいけない」
あの場所に居て、悲しいと思うことはあった。俺がそう思っている以上に、他人から見れば悲しいと感じることがあったのかもしれない。
…けれど、悪人を殺すことと、ダークネスを殺すことの違いが、まだ、分からない。
あの場所に居た頃教わったのは、「悪を許してはいけない」
武蔵坂も、「悪を許してはいけない」。
その一点は変わらないように思えるのに、どうして違うのだろう。
寮生に聞いてみると、答えは色々だった。
「馬鹿ね、どっちも同じよ。違いなんて無いわ」
「人は法で裁けるけど、ダークネスは裁けないだろ。なら人は、僕達ではなく法が裁くべきだ。ダークネスは法では裁けないから、僕達が代わりに灼滅するんだよ」
「はあ?なに、お前そんなこと考えてんの?とりまダークネス倒せばいいって言われてんだから、それで良くね?暴れられるし一石二鳥」
「私は、罪を償うために此処に居るよ。それだけ」
通っているクラブの部員や、よくブレイズゲートに連れて行ってくれる皆に、
訊いてみようとも考えた。きっと彼らは、俺の質問にきちんと答えてくれる。
けれど皆やさしいから、心配を掛けてしまう。だから、訊いてみたことはない。
「正しいかどうかは自分で決めろ」
保護者の言うことは、分かりやすいようで、よく分からない。
ネジを巻き終えて手を離すと、オルゴールが鳴り始めた。
店先で聴いた時も思ったが、やはり知らない曲だ。
今度寮母に訊いてみよう。笛で吹ける曲なら、練習して吹いてみよう。
吹ける曲が増えると、寮夫婦はとても喜んでくれる。
保護者も、様子を見に来た時に「聴かせろ」と言う。
「自分の意志で物事を決めて、生きていくのが今のお前の任務だ」
…あの日、保護者が笑って言った命令を、俺はまだちゃんと理解していない。
いつか、彼の言うことの意味が、正しく分かる日が来るのだろうか。
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